最近、紅蓮が気になる。なぜだか、気になってしょうがないのだ。
なのに、カオがあわせられない。眼が合うと、衝動的に逸らしてしまう…。
どうして、なのだろうか――。




昌浩は自室にいた。隣に物の怪はいない。もちろん、昌浩が避けているのだ。
物の怪も今日は忙しいらしく、昌浩のもとへは用がないと来なかった。
昌浩は、ボーッとしていた。
傍から見てもわかるぐらいに、悩んでいた。
すると、コンコンと戸を叩く音が聞こえた。
――?誰かな…。

「昌浩」

彰子の声で、名が呼ばれる。
あ…彰子!?何で!?
昌浩は慌てて立ち上がり、戸を開けた。

「彰子、どうしたの?」
「うん。なんか昌浩、最近変だなぁと思って…」

昌浩はギクリとした。

「な…何で!?」

語尾から焦っているのがわかりそうなものだが、彰子は鈍いのか、まるで気付いていないように思える。

「……何でかしらね。なんとなくそう思ったの」
「何にもないよ?き、気のせいじゃないかな」

昌浩は平静を装って言う。いささか装えていないような気もしたが…。

「そう。でも何かあったら遠慮なく相談していいんだからね、昌浩」
「……ありがとう、彰子」

昌浩は少し困ったような顔で微笑んだ。

「うぉーい、昌浩〜」

バンッという戸を開ける音と共に、物の怪が入ってきた。

「も…もももももっくん!?」

突然現れた物の怪に驚き、うっすらと顔を赤らめる。

「なんだよ、その反応は。おっ、彰子もいたのか。昌浩の部屋に来るの、久しぶりじゃねぇか?」

物の怪は訝しげに昌浩に文句を言ったが、彰子に気付き話しかけた。

「そうね、そういえば最近来ていなかったわね」
「だよなぁ〜」

二人が話している間、昌浩は身動き一つしなかった。
驚きのあまり、固まっていたのだ。
そんな昌浩の様子に気付いた物の怪は、昌浩の顔を覗き込む。

「……昌浩や、どうしかしたのか?」

いきなり眼があい先程よりも更に赤くなった昌浩は、さりげなく眼を逸らし応える。

「な…なんでもないよ、もっくん」
「そうか?」
「うん。それより、何か用があったんじゃないの?」

昌浩は、無理矢理話をそらした。
物の怪はまだ昌浩の様子が気になっていたようだが、用事を思い出したようで会話にのってきた。

「あぁ、そうだった。昌浩、晴明が呼んでたぞ」
「……じい様が?なんだろう…」
「早く行かないと、また何か言われるんじゃないのか?晴明の孫」
「孫言うなっ!そんなのもっくんに言われなくたってわかってるよ」

物の怪にのせられた昌浩は、いつもの調子を取り戻し言った。

「言ってくる」

昌浩は立ち上がり、ずんずんと部屋を出ていく。
物の怪は昌浩の反応を楽しみながら見送っていた。
彰子は、ぼんやりとそんな二人…いや、一人と一匹を見ていた。




「昌浩は単純だなぁ、彰子や」

取り残されていた物の怪は同じく取り残されていた彰子に同意を求める。

「え、えぇ…」

彰子は上の空で応える。
先程の昌浩の反応が気になっていたのだ。
昌浩の物の怪に対する反応、あれは――。

「彰子、俺もちょっと晴明のところへ行かなくちゃならんから…」
「えぇ、わかったわ」

彰子はハッとしたように言った。
物の怪がいなくなった後、彰子はまだ考えていた。

昌浩……まさかもっくんのこと…。
いぇ、でも男同士だし…人間でもないし…。
まさか、ね。

鈍いのか、鋭いのか……。
昌浩が女だと知らない彰子は、いつまでも、いつまでも悩み続けていたのだった。




彰子を出したいと思いながら書いた小説でした。
私、ちょっとは成長してるのだろうか……。

2007.03.移転に伴い一部修正しました。